「お稲荷さまのキツネが油揚げを好む」という話を聞いたことがある方は多いと思います。
日本の民話や伝説に登場するこの組み合わせの起源は何でしょうか？
なぜキツネが油揚げを好むとされるのか、その背景には神話が関係しています。
実際にキツネが油揚げを食べるかどうかは疑問ですが、多くの人が興味を持っています。
キツネは稲荷神の使いであり、稲荷神は農作物の豊作を司る神です。
この神の使いであるキツネは、農作物を荒らすネズミを食べるため、稲荷神にはネズミの天ぷらが供えられていたことがあると伝えられています。
時が経つにつれて、ネズミではなく、豆腐から作られる天ぷら、つまり油揚げが供えられるようになりました。
そして、油揚げを使用した料理は「稲荷」と呼ばれるようになりました。
この背景には、長い時間をかけて形成された多くの物語があります。
ここでは、きつねと油揚げの不思議な関係とその背景を探り、意外な事実を明らかにします。
この興味深い物語を一緒に探究しましょう。
【記事でわかること】
・お稲荷さまとキツネの関連性を理解できます。
・キツネが油揚げを好むとされる背景についての洞察を得られます。
・油揚げが神への供え物として選ばれた理由を知ることができます。
・リアルキツネの食生活についての情報が得られます。
お稲荷さまのキツネと油揚げの関係の謎
なぜ油揚げがキツネの好物とされるようになったのでしょうか。
ここではいくつかの説をご紹介いたします。
なぜ油揚げがキツネの好物とされるのか①キツネ信仰説
キツネと油揚げの関連付けは広く知られていますが、この「油揚げ」はもともと豆腐を薄切りにして揚げたものではありませんでした。
日本において、農作物を荒らすネズミを食べるキツネは、古来よりありがたがられ、敬われてきました。
地域によっては、キツネが好むとされるネズミを油で揚げたものをキツネの巣穴前に供える風習もあったようです。
そして、キツネを従えているお稲荷さま（穀物の神様）は、「農作物を食い荒らすネズミを捕食するために、キツネを遣わした」とされるようになり、稲荷神社にはネズミを揚げた天ぷらが供えられるようになったのです。
また、ネズミは蚕（かいこ）の天敵でもあり、キツネ（お稲荷さま）は稲作だけでなく、養蚕を行う農家にも広く信仰されるようになりました。
その後、仏教の伝来により、肉食や殺生が避けられるようになり、ネズミの代わりに豆腐を油で揚げた油揚げが広まったと言われています。
なぜ豆腐と油揚げになったのかというと、昔話には「化け猫が油を舐める」という話もあるように、肉食動物にとって油分は貴重でした。
また、大豆は「畑の肉」と呼ばれるほど価値がありました。
その加工品である豆腐、そして油で揚げた油揚げが稲荷神への供物として選ばれるようになったとされています。
なぜ油揚げがキツネの好物とされるのか②穀物の神様への供物説
油揚げが穀物の神様への供物とされる理由についてのもう一つの説です。
元々は稲穂や豆が供え物として使われていましたが、豊穣の象徴である五穀（米・麦・あわ・きび・大豆）を含むこれらの作物が加工され、油揚げが選ばれるようになったとされます。
油で揚げることによって高カロリーな食品になり、古代の人々はこれを神様へのご馳走として見なし、供え物として選んだと言われています。
ここから油揚げは、稲荷神社と関連の深いキツネの好物として浸透していったという説です。
なぜ油揚げがキツネの好物とされるのか③稲荷寿司の起源説
稲荷寿司の原型が、「稲荷神社に備えられていた油揚げに寿司をつめたものから始まった」という説もあります。
油揚げを煮て、その中に米を詰めるお供えが初めて行われた際、その形状が「油で揚げたネズミ」に似ていたことから、このスタイルが採用され、お稲荷さまに奉納されるようになったとされる説です。
なぜ油揚げがキツネの好物とされるのか④米俵形象説
油揚げに米を詰める行為は、米俵を模しているという説があります。
稲荷神さまは農耕と五穀豊穣の守り神として知られ、この形状のお供えが豊穣の象徴として稲荷寿司の形になったとされています。
これが「お稲荷さん」と呼ばれるようになった背景にもつながっています。
お稲荷さまの神様とは
お稲荷さんは日本の民間信仰に深く根ざしています。
「お稲荷さま」ときくと、多くの人がキツネを思い浮かべますが、キツネは神様そのものではなく、神の使いとされています。
その神様とはどのような存在なのでしょうか。
キツネの古称にちなんで解釈されたという説
お稲荷さまの神様に関しては複数の説が存在し、一つは宇迦之御魂神（うかのみたまにかみ）や御饌津神（みけつのかみ）として知られる穀物の神様とされています。
日本の弥生時代から、蛇に対する信仰は深く根付いており、稲荷山はかつて蛇神への崇拝の中心地でした。
しかし、平安時代になると、キツネを神の使いとする信仰が広がり始めました。
宇迦之御魂神（うかのみたまにかみ）が稲荷神と関連が深いとされ、その別名である「御饌津神（みけつのかみ）」が、狐の古称「けつ」にちなんで、「みけつのかみ」を「三狐神」と解釈する語呂合わせが生まれました。
このようにして、徐々に狐は稲荷神の使者や一族として認識されるようになりました。
また、「うか」という言葉が穀物や食物を意味することから、古くから女神として崇められていました。
白狐にまたがるインド伝来の神様という説
もう一つの説は、インドから伝来した吒枳尼天（だきにてん）がその神様とされることもあります。
この神は元々鬼神であり、仏教の影響を受けて天と呼ばれるようになりました。
白狐にまたがる女性の姿で描かれることもあります。
神社とお寺の両方にお稲荷さんが存在することから、神仏習合の影響も見受けられます。
地域によっては山神や動物の神としての面も持っているため、お稲荷さんの信仰は多様な形をとっています。
稲荷寿司について
稲荷寿司は油揚げを使用した寿司で、発祥の地は諸説あるものの、その名前は稲荷神社に由来しているとされています。
この寿司は、稲荷神の使者であるキツネが油揚げを好むという伝承にちなんで名付けられました。一部地域では、「信田鮨（しのだずし）」または「信太鮨」とも呼ばれています。
稲荷寿司の地域別の味わい
稲荷寿司の味は地域によって異なり、東日本では味付けが濃厚であるのに対し、西日本では薄味が好まれる傾向にあります。
この違いは、気候の影響を受けており、寒冷地では濃い味付けが、温暖地では薄味が好まれるとされています。
稲荷寿司の形状の多様性
稲荷寿司は形状にも地域差が見られます。
東日本では四角形が一般的で、これは米俵を模しているとされます。
一方、西日本では三角形が多く見られ、これはキツネの耳を象徴しており、豊穣を司る稲荷神社の象徴とされています。
なぜ「助六寿司」はその名で呼ばれるのか？
助六寿司の名前の由来は、江戸時代の歌舞伎十八番の一つ「助六所縁江戸桜」にあります。この劇の主人公「助六」とその愛人「揚巻」にちなんで名付けられたもので、揚げ（いなり寿司）と巻（巻き寿司）を組み合わせた寿司として知られています。
本物のキツネの食性について
では全国に分布するリアルなキツネは本来、何を食べているのでしょうか。
キツネは多様な食物を摂取する雑食性動物です。
主に小型哺乳類、鳥類、爬虫類、昆虫、果ては植物まで、食べる範囲は広いです。
ノネズミ、ウサギ、リス、鳥、ヘビ、カエル、カブトムシなどが食べ物に含まれます。
また、人間の生活圏近くで生活するキツネは、野菜や残飯も食べることがあります。
リアルなキツネは油揚げを食べる？
キツネはその柔軟な食性から、様々な食べ物を摂取しますが、キツネが実際に油揚げを好むかは確かではありません。
きつねの生態的役割
きつねが食べるものを知ることで、自然界における彼らの役割をより深く理解することができます。
きつねは以下のような重要な役割を果たしています。
・害虫や小動物の数を調整し、生態系を保つ。
・植物の種子を運び、新たな場所での植物の生育を促進する。
これらの活動を通じて、きつねは生態系のバランスを維持するのに貢献しています。
この理解は、人間が自然と調和して生活するためのヒントにもなります。
まとめ
お稲荷さんのきつねが油揚げを好むとされる背景には、日本の伝統的な物語や信仰が深く関与しています。
お稲荷さんは収穫を守る神とされ、その使いであるきつねは、害を及ぼすネズミを捕食することで農作物を保護します。
神様への供え物として選ばれた高カロリーな油揚げは、豊穣の象徴として古くから重宝されています。きつねが実際に油揚げを食べるかどうかは確認されていませんが、この伝説は日本文化の重要な要素です。
きつねと油揚げの関連性は、農作物を守る信仰と共に、日本の文化的な背景と密接に結びついています。
この話は、稲荷寿司が油揚げと米を使う理由にも影響を与えており、その起源や形状に関するさまざまな説が存在します。
この記事を通じて、お稲荷さんの信仰が農業や食文化にどのように組み込まれているかについての理解が深まります。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
